神社に伝承されている防疫技術、結界について

 現在のように医療体制が充実していなかった古い時代は、日本でもシャーマニズム系の医療技術が活躍していたことは、昨日の説明である程度把握できたと思います。これは世界中の民族の古い文化に見られる傾向です。オマジナイのような民間療法がほとんどですが、日本の神道の場合は例外的に、現在の西洋医学を凌ぐ一面も備えています。ところが、明治維新以降、シャーマニズムを非科学的な迷信と蔑視する西洋型実証主義の発想が、正しい情報の流通を妨げてきた歴史があります。この発想は、20世紀中頃までは中国の医療技術にも向けられていて、今日では迷信とは考えられていない漢方やツボといったものですら、怪しげな迷信と蔑視する空気を生み出して、医療の発達を阻害していたことが、今日から見れば分かります。まずは、この点から観察をはじめます。


 20世紀中頃まで、西洋医学の世界では、漢方の体系すらオカルトの塊のように解釈していました。蛇などの動物をミイラにして粉末を煎じて飲む(赤マムシドリンクなど、蛇パワーも侮れませんけどね)なんて風習は、怪しげな魔女のスープを連想させてしまうので、変なレッテルを張りたくなる発想も分からないわけではないのですが、迷信でない漢方薬もいっぱいあるわけで、情報の混乱はデメリットが大きかったと思います。20世紀の後半になって、薬にできそうな合成化学物質のネタが尽きはじめると、製薬会社の目が漢方薬にも向けられて、有効成分を抽出して評価するようになって、ようやく状況が一転したようです。今では漢方の考え方をオカルト視する医師はいなくなったようです。もちろん、今でも西洋医学と漢方の処方の考え方は、まったく異なる体系のまま融合してませんけどね。融和しないまま、相補的な関係を築いている、と表現するのが正しい状況のようです。

 体のツボも、西洋型実証主義に立脚する解剖学的には、きわめて難解な存在です。当然のようにオカルト視していた時期があったのです。なにしろ、人体を解剖していくら切り刻んで顕微鏡で見ても、ツボなどという器官はまったく見当りません。誰にも存在を実証できない謎、つまりは東洋の神秘ですね。掌には内臓のツボがあって、心臓が悪い人の掌にある心臓のツボを押せば、極端に痛がります。その人が病死したあとで、心臓の神経が掌まで伸びてないか調べても、何も出て来ないのでは、まるで幽霊です。今でもGスポットがあるかないか分からない、なんて議論が沸騰してますが、同じ理由で起こっている混乱だということを、正しく理解できる専門家がほとんどいないまま情報が錯綜しているようです。物質的に実在しないいツボが、オカルト以外の何物でもないと認識されていた時代に変化をもらたしたのは、多細胞生物の細胞間の協調現象に関する考え方の登場でした。多細胞生物は、A→B→Cと細胞同士がドミノ倒しのように物理的に影響を及ぼしあって、お互いに協調して動いているのではありません。それをやっていると、何億もある植物の細胞を全て連動させて、一つの生物として振舞わせることなど出来ない相談です。体全体のことを部分である細胞が知り、個々の細胞のことを全身が知るような、部分と全体の情報の授受関係の確立が必要になるのです。掌に現れる心臓のツボの存在は、全身に起こっている不具合を、部分である掌が知っているということです。心臓のツボは耳にもありますから、耳も全身の不具合を知っていることになります。単純に神経で繋がって情報交換して認識しているわけではなく、多細胞生物には、部分と全体を統合して連携させる、さまざまな情報処理システムがあることを認識しないと、ツボ(反射ゾーン)の存在は理解不可能なままです。生命情報学の発達に伴って、生物の部分と全体をフラクタル的に構造化させるシステムの存在が明らかになり、掌や耳といった部分に体全体の情報が反映されるメカニズムは、生物の構造を自己組織化させている根源的なシステムに由来することが解ってきたのです。現代ではツボをオカルト視する空気は消えて無くなりました。


 上の二例は中国に伝承されてきた医療技術に対する、西洋型実証主義の稚拙な無理解に伴う蔑視現象です。同じことは、日本に伝承されてきた医療技術に対しても起こっています。しかも、再評価はほとんど行われておらず、未だに迷信扱いするムードが漂っています。西洋型の科学知識が、東洋型の生得的真理に立脚した、神社に伝わる防疫技術を解明できるレベルに達しているにもかかわらず、未だに無理解を装っているように見えます。そこで現代人の知識の体系に楔を打ち込む意味で、この文章を書いてみることにしました。

 昨日も書きましたが、祈祷は、歌声が脳に与える影響によって、免疫系が活性化することを研究している心身医学の方面人々の考え方を採用すれば、迷信ではなくなります。祈祷のときに焚く護摩は、アロマテラピーの考え方を採用すれば、同じく迷信ではなくなります。祈祷に伴う神憑りも、催眠や暗示に関する脳の研究が進んだことで、脳の活性化技術や感化能力と関係していることが判明して、迷信と見る人は少しずつ減っていく傾向を示しています。


 日本の神社の優れた防疫技術と言えば、結界のことを指します。鬼(疫病神)の進入を防ぐ結界を陰陽師が張る技術の正体を、解き明かしていきましょう。 昔陰陽師が扱っていた鬼は、現在伝わっている「人の姿をして額に角が生えている」姿とはまったく違うものでした。藤原四兄弟が相次いで天然痘によって病死して、蘇我氏の滅亡の祟りと考えて怨霊を恐れる空気が生まれ、そこから疫鬼・疫神の存在が考えられるようになった当初は、「疫病を流行させる鬼は、人の目には姿が見えない存在」とされていたのです。ところが後世になって、無関係な仏教の羅刹のイメージが混入したことで、本来の正しい認識が変質して、迷信的な鬼の姿が作り出されてしまいました。もともとの鬼は、疫病の病原体を擬人化した象徴ですから、細菌やウイルスが目に見えないように、「鬼は人の目に見えない」のが当たり前です。陰陽師が疫鬼・疫神に対処する結界(防疫)技術を確立した時代の、当初の認識は正しかったのです。天然痘ウイルスによって藤原四兄弟が相次いで病死した時代の鬼は、架空の迷信ではなく伝染病として実在する脅威でした。もちろん、いい加減な迷信的なオマジナイでは、本物の伝染病に対抗することはできません。日本の神社に秘伝として伝承される対天然痘用防御結界は、京都の祇園の伝染病平癒のお祭りの主役、牛頭天王の秘術として存在します。ウイルステロに使用されることがないように、陰陽師の祖吉備真備から託された技術を、ずっと今日まで私達の一族の内に封印してきたのですが、すでに天然痘は撲滅され、牛の天然痘を用いた種痘の技術(牛痘法)も一般に広く知られているので、牛頭天王の秘術の概要の説明程度は行っても問題ないと判断します。西洋で牛痘法が確立されるずっと以前に、日本では牛頭天王の秘術が確立され、伝染病の蔓延を阻止することに成功していました。

 ただし、牛痘法はワクチンの生成に関わりの深い技術で、新型インフルエンザのワクチンを巡る騒動とも絡んでくる微妙なテーマです。残念ながら、種痘は医原病を生む危険なものとして、廃止を余儀なくされた経緯があります。新型インフルエンザについては、すでに被害を捏造したと言った指摘が出ているので、疑問視している人も多いと思います。さらにワクチンとは何かを巡って突っ込んだ話を展開していくと、西洋医学と真っ向対決してしまう複雑な状況が生まれるため、この話は後日に譲ります。科学知識と遺伝子情報系が保持している生得的真理の関係を示さないと、なぜ日本や中国の伝統的な医療技術が、西洋の科学的実証主義を凌駕する、正しさを備えた知識の体系になっているのか、納得できないと思います。科学知識と生得的真理の関係を解説したあとでないと、牛頭天王の秘術を明かしても、ただの迷信にしか見えない人も多いと思うので、今は書かないことにします。真理とは何か、その情報の成立過程を追っていけば、西洋の科学的実証主義の問題点が明らかになり、人類は新たな知的情報処理の体系を手にすることも可能になる、とだけ書くに留めます。


 神道に伝わる結界技術の代表格は注連縄でしょう。細菌やウイルスを擬人化した、目に見えないシンボルにすぎなかった鬼が、後世になって疫病対策の知識がない人々の手で、迷信的な姿を付与されてしまったように、注連縄もまた、登場の当初は本格的な結界技術だったものが、後世になって形骸化して、迷信が混入していくという、同じ情報の変質の経過を辿っています。

 注連縄は、神社の建物などに張り巡らして、ここは神聖な場所ですよって、目印にしてますよね。でも、ただの藁で編んだ紐に、聖域を守るような結界の力が本当に備わっていると考えるのは迷信です。藁で編んだただの飾り紐は、たしかに魔物を退ける力がないただの迷信ですが、じつは、注連縄のルーツとなった別のアイテムの存在に気付くと、この結界技術が迷信ではなかった時代があることが見えてくるのです。

 神社の建物は、高床式倉庫が元型になっています。梅雨の時期に高温多湿になる日本で、凶作による飢饉の発生に備えて、お米を乾燥した状態で保存するには、高床式倉庫が向いていたようです。このような倉庫にとって、最も防がなくてはならない魔物と言えばネズミでしょう。倉庫の中に棲みつかれて、鼠算式に増えてしまったら、損害は甚大です。猫がまだ日本に存在しなかった弥生時代、ネズミの天敵は蛇でした。今でも農村に行くと、昼間でも青大将が農家の周りに姿を現します。村人達は蛇を追い払ったりはしません。とくに青大将のアルビノ(白蛇)は、神様の御使いとして大切にされます。ネズミは蛇の臭いを嗅いだだけで、怖がって居着かなくなるので、蛇の抜け殻を高床式倉庫の周囲に張り巡らせておくと、ネズミが入れない臭いの結界を形成できます。これが、注連縄の本来の姿でした。つまり、注連縄が蛇の皮だった時代には、迷信ではなくきちんと機能を発揮して、実生活の役に立っていたのです。

 神社に神様を祭るようになる以前は、山野に八百万の神々が宿っているとされました。出雲系の神道では、神は普段天上に住んでいて、必要に応じて落雷となって甘南備山に降臨することになっていたのです。山が御神体なので、拝殿はあっても本殿がない古い形式を取る神社は今も現存します。神様が神社に祭られるようになったのは、人間のほうの都合で、ヤマト王権大和朝廷)が姿を現しはじめて、宗教を国を治める支配の道具に使う発想が生まれてからのことのようです。神社の建物は、中に米などを貯蔵するわけではないので、倉庫のようにネズミ避けを考える必要はありません。それでも、高床式倉庫の様式の建築物なのに、蛇の皮の飾りが付いてないのは見るからに寂しいので、代わりに藁を編んだ紐で飾り付ける風習が生まれて発展していったのです。神社の正面に飾り付けられる大きな注連縄は、雄雌一対の蛇を表現している場合もあります。ちゃんと雄と雌の注連縄には区別がある地域もあります。今では神社は狛犬が守っていますが、狛犬が伝来する以前は、蛇が睨みを利かせて神域を守るスタイルをとっていたのです。古風な伝統を受け継ぐうちの一族の食べ物を貯蔵している蔵には、今でもネズミ避けの結界として、白蛇の抜け殻が張り巡らしてあります。もちろん迷信ではなく、実用的な防御効果を発揮しています。


 続いて、風邪の病魔を寄せ付けない結界技術に目を向けてみましょう。私は生まれてから今まで一度も風邪をひいたことがありません。親戚にも風邪をひく人はほとんどいません(老衰した人を除く)。子供の頃から、学級閉鎖が相次ぐ季節になっても、毎年私の周りの席の子だけは欠席しないので、私の周囲には風邪が寄り付かない見えないバリアーが存在する、と友人達は噂して、結界の存在を信じていました。中学になって理科の教師に、なぜ風邪をひかないのか質問されたので、以下のような内容の、父から教わった昔話を用いて説明しました。

 昔々中国の歴代皇帝達は、大きな団扇で煽がれて、優雅な生活をおくっていました。皇帝の体にハエや蚊がとまらないように、担当者が必死で煽いでいたのです。あるとき、虫が嫌う匂いがする木材で団扇を作ると、仕事が楽になることに気付いた人々は、しだいに良い香りがする香木を収集するようになっていきました。香木で作られた団扇を用いて良い香りを漂わせると、不思議なことに、宮廷内で風邪が流行しなくなることに気付いた人々は、高貴な香りが宿る霊木には、病魔を撃ち払う神秘的な力が宿っていると考えるようになりました。日本の天皇に対して中国の皇帝が団扇を贈ったときに「これは何か」と訊ねられた使者は、「病魔を撃ち払うもの」と回答したので、「うちはらう」を略して、日本ではうちわと呼ぶようになりました。香木で作られた個人用の病魔を退ける魔除けの棒は、聖徳太子が手に持っている木の棒(勺 しゃく)の形をした、演説のときに使うカンニングペーパーとして、役人を中心に普及していきました。持ち歩くメモの量が自然に増えて、香木の板を何枚も紐で束ねて用いるように進化した結果、日本で扇が発明されました。香木に豊富に含まれる精油フィトンチッド)は、抗菌・ウイルス失活作用を持つので、高貴な香りがする木製の扇子を持っていると、精油の蒸気が体の周りに病魔の進入を阻む結界を張ってくれるのです。

 私は非常に暑がりの体質で、のぼせやすいことを理由に、季節に関係なく常時木製の扇子を手に持ってパタパタやっているのをみんな見知っていたのですが、高貴な香りを漂わせるのは貴人の嗜み、ぐらいにしか思っていなかったようです。漂っている雅な香りが、病魔の進入を阻む物理的な結界を形成していたとは、思いもよらなかったようです。千年以上前に生まれた、中国皇室発の防疫技術を、うちの一族が今も伝承していることに驚いた教師は、私が動かしている扇に鼻を近づけようとして、学友達に無礼をたしなめられました。愛用しているのは、中国の皇帝が日本の天皇に贈ったとされる香木で、近年になって作られたものです。応仁の乱によって京都が焼け野が原になったとき、うちの一族の住む隠れ里に大量の物資が疎開しました。今は一族が管理する廃坑跡に設けられた地下倉に保存されています。木製の扇子といっても重い桧扇ではなく、煽ぎやすいように香木を薄くスライスして作られたものです。香りが持続して病魔に対する結界を維持できる寿命はおよそ3年で、それを過ぎたものは粉末にして香道で使うか、健康茶として飲んでしまいます。この霊木からは、抗がん剤の成分が採れるといった話も近年散見されます。したがって、精油成分を吸引することによる健康効果も、幾分かは期待できるようです。


 精油成分を用いた風邪薬には、胸に塗って体温で温まって蒸散してきた精油成分を吸引する、ヴィップス・ヴェポラップといったタイプのものがあります。愛用している結界形成効果は比較にならないという実験結果もあるようです。「神憑りさんの周囲に存在する見えない結界の正体は、香木の匂いの成分だった。」という話は、あっという間に校内に広まりました。「神社で売られている無病息災の木製の御札も、香木が使われているから迷信じゃないらしい。」「開けてみたら、無病息災のお守り袋の中に、いい香りがする文字が書かれた木片が入っていた。今年風邪をひかなかったのは、これのおかげ?」「あそこの神社の絵馬もヒバの木らしい。ヒバってヒノキより免疫力活性パワーがあるんだよね。神社に奉納しないで家に持って帰って部屋に飾っておくほうがいいな。」といった情報が飛び交って、受験生達が神社に殺到して、その日のうちに木製のお守りは全て売切れてしまったのでした。紙製のお守りはプラシーボ効果しかないという噂が立って、一枚も売れませんでした。

 「バスクリンにも、ヒバエキスは入ってるんじゃないの?」と私が言うと、スーパーなどのヒバエキス入りの入浴剤が売切れてしまったり、「斑点(シュガースポット)がついたバナナって、免疫力を活性化する物質が大量に含まれてるみたい。」と話すと、スーパーのバナナ売り場に一斉に生徒が押し寄せたり、「歌声で脳の働きが調整されて免疫力が高まる」という話をすると、神社に巫女萌えの盗撮小僧だけでなく、望遠マイクを持った盗聴小僧まで現れて、録音したものを校内で高値で販売して、風紀委員の私達に補導される人も出てくるなど、受験シーズンが終わるまで、結界フィーバーが続いたのでした。一番困ったのは、教室内にいろんな匂いが漂って、相性が悪い香りが混ざったときには臭く感じられるため、息苦しくなったことです。匂いに敏感な私がついに頭に来て、フィトンチッドを拡散する装置を校内の各所に設置する提案を行いました。一種類の森林の香りで統一したことによって、学校全体に病魔の進入を阻む結界が形成されました。以降学級閉鎖の発生率が激減したことは言うまでもありません。近年になって、フィトンチッドを拡散する装置が何種類か市販されるようになり、新型インフルエンザ対策の一環として、不完全な形ながらもさまざまな場所に導入されるケースが増えてきています。神社に古くから伝わってきた未科学の分野にあった防疫技術の一部は、科学技術のなかに移植されて、形を変えて現代の医療防疫の現場で復活しつつあるようです。もちろん、本格的な結界技術を持っている私達から見ると、まだまだ西洋医学は未発達なので、不完全なものにすぎませんが、そのうちインフルエンザウイルスや虫歯菌が撲滅できる日も来るだろうと思います。


 神社に伝わっている防疫技術は、何も物理面だけに限られたものではありません。言霊を響かせる歌声などは、脳に作用して病は気からの部分を改善するので、心身医学の面から有効と思われる心理的な結界も存在します。1998年にフィトンチッド発生装置が校内に設置されるまでは、私の席の周りの子達は教室を離れると、香木の扇子が生み出す結界の外に出てしまっていたことになります。それでも風邪をひかなかったのは、私から精神的な感化を受けて、免疫活性が高い状態を良好にキープできていたからです。精神的にテンションが高い状態をキープするには、私がその場にいる必要はありません。私の脳が発生させている微弱な磁気を、センサーで解析して、そのパターンを抽出して、経頭蓋磁気刺激装置などを用いて適度に脳を刺激しても、同じような結果が得られることが分かっています。

 私は高校生のとき、電磁的な刺激が脳に与える影響を研究する会を略して電脳研究会を主催していました。うちの一族には、強磁気を帯びた隕鉄製の神剣が伝わっています。調べてみた結果、人類がまだ製鉄の技術を持っていなかった時代に、鉄でできた隕石を加工する技術を用いて整形されたものだと分かってきました。どうやら、シュメール文明の地域で発見された隕石を、あまり温度を高めることなく整形して作られたようなのです。シルクロードの西の果てにある国の宝物がどうやって日本まで来たのか不思議に思いますが、とにかく伝家の宝刀です。この神剣を手にして剣舞を舞うと、脳が活性化して運動神経が一時的に良くなり、一時間ほどその状態が継続するので、神剣には霊力が宿っていると信じられてきました。1985年頃から盛んになった経頭蓋磁気刺激法の研究によって、8の字型の電磁石を用いて脳を磁気刺激した場合にも、運動神経が一時的に良くなった状態が一時間ほど継続することが明らかになりました。強磁気を帯びた隕鉄製の神剣の霊力の正体に、科学の光が当たる可能性が見えてきたのです。この未科学分野に興味を抱いた父は、神剣の分霊品(レプリカ)を、親戚の刀鍛冶と共同して製作してくれました。私が趣味の七宝焼きの手法を用いて金銀の装飾を施して、ガラスコーティング仕上のピカピカに輝く美術品に仕上げて愛用しています。オリジナルよりもさらに強い磁気刺激効果を発揮するものが完成しました。私が主催する電脳研究会は、経営陣を同じくする私立の大学の教授を顧問に招いて、被験者のデータの収集に乗り出しました。風紀委員の私達に捕まると、人格矯正と称して、経頭蓋磁気刺激装置や神剣が帯びた磁気を用いたブレイン・ウォッシング(洗脳)を施されるため、不良グループから非常に恐れられていました。悪いことに対して拒絶反応が起こるように、倫理観を司る深層心理に対してちょっとした教育を施していただけなのですが、悪いことに対して嫌悪感を感じる潔癖症の人に生まれ変わるため、なにやら誤解されて怖がられていたようです。他にもさまざまなデータの収集やノウハウの蓄積を行っていたのですが、恐怖の?ブレイン・ウォッシングだけが注目されて、他の成果はあまり評価されていなかったようです。本当は、悪い人達の矯正にはありま興味がなくて、それよりも、磁気が健康面に及ぼす影響の調査、つまり磁気ヒーリングの効果を熱心に調べていました。磁気刺激によって一時間ほど運動神経を良くする効果は、空手部や柔道部や野球部から引っ張り蛸の状態でした。ふだん帯刀している愛用の神剣は、刃付けされていない七宝焼き仕上なので美術品扱いですが、人前で振り回すと本物の剣を振っていると勘違いする人もいるので、応援の剣舞は人目に触れないところで行うようにしていました。このため、敵対視するカツアゲグループは、「電脳研究会は、試合の直前にサバトを開いて運動部員達を洗脳している」「磁気刺激装置は●●●真理教の教祖が使うヘッドギアと同じ」なんて怪情報を流して、しきりに攻撃を試みていたようです。


 私達が集めた、磁気刺激によって得られる免疫活性のデータを踏まえて、親戚が経営する私立の学園には、校門や廊下に脳を磁気刺激する環境磁気発生装置が設置されています。これは、神社に伝承されていた、病は気からの精神面の防疫結界を、現代の科学技術と融合させて復活させたと言えるものです。神社の御神体とされる甘南備山の山頂にある磐座(いわくら)が磁気を帯びた鉄分の多い花崗岩の岩だったり、霊場とされる場所が、特殊な磁気を帯びた土地だったりすることはよくあります。活断層に沿って神社仏閣や教会が建てられる傾向が世界的に認められるため、レイラインと呼ばれているようです。地下で巨大な岩石が破砕されると地電流が発生して、磁気を帯びた土地が形成されるため、脳が磁気刺激を受ける環境が霊場として好まれてきたのではないか、という説もあります。こういった宗教施設が建てられてきた神聖な土地が持つ効果が、経頭蓋磁気刺激装置の登場によって、ある程度実験室内で再現して確認できるようになったので、電脳研究会と称してさまざまな試みを行って、生かされるようにしていったのです。

 宗教施設が好んで建てられてきた場所に存在する活断層は、岩石に加わる力の変化に応じて、圧電効果によって刻々と地盤が発生させる電圧が変化しています。その影響を受けて、たえず地電流や磁気も変動します。あまり知られていませんが、活断層の変動とは無関係に、地球全体の磁気もたえず変化しています。これは、太陽が噴出する大質量のガスなどの影響で地球を取り巻く電磁的環境(オーロラ電流など)が変化することが原因の一つと考えられています。こういった環境磁気の周期的な変動が人の脳に与える影響について、20世紀から研究が行われてきました。古い時代から皇室には、北枕で寝ると良いという健康法が伝わっています。これは地磁気の極の方向と人が寝る方向を合わせると、睡眠の内容が変わることを意味しているのではないかと考えて、調べた人がいました。睡眠中の人間の頭近くに磁石を置いて、磁石の位置の移動によって睡眠状態が変わることを示すデータを得ています。また、環境磁気を遮断した部屋に住んでいると、中枢神経系や日周リズムなどに明らかに異変がみられると報告をした研究者もいました。これらを踏まえて、鉄筋や鉄骨が使われているコンクリートの建物の中では、自然環境よりも極端に少ない地磁気しか浴びることができないので、磁気欠乏症候群になるのではないか、と推理した人もいます。一般の人向けに易しく書かれた分かりやすい情報サイトはここなどです。「現代人の磁気欠乏症候群」 そのページには、残念なことに、古い時代の日本には、海外のような磁気を活用するアイテムやノウハウが存在しなかったかのように書かれています。ところが、皇室には北枕健康法が伝わっています。また、神社の御神体とされる磁気を帯びた磐座(いわくら)の前で神楽を舞う神事が斎女(巫女)の脳に与える効果なども、古くから知られてきました。火山が侵食されて出来た西宮の甲山の山体は、ドーナツ状の特殊な磁気構造を持っているため、弥生時代からうちの一族の聖地の一つだったと言い伝えられています。御先祖様が神剣を奉納したという古い言い伝えが残っているのですが、昭和49年に山頂から本当に銅戈(どうか)が出土して、誰もが驚いたそうです。私は神楽を舞うときに隕鉄製の神剣を愛用していますが、舞に合わせて振り動かすことで、脳にリズミカルに変動する磁気刺激を与えるもので、磁気ネックレスなどのアイテムとはまったく異なる脳活性化作用をもたらすことが分かっています。磁気ネックレスを身に着けていてもトランス状態に移行するようなことはありませんが、隕鉄製の神剣を振ると、神憑りして託宣する神社の神事がスムーズに行えるので す。しかしこういった研究の情報だけでは、環境磁気が人の精神活動や健康に影響を及ぼしていることは示唆できても、具体的にどのような磁気環境を機械装置を用いて人工的に作り出せばいいのかまでは、判然としませんでした。ピップエレキ判と、今日一般的に脳に磁気刺激を与える治療目的で使われている経頭蓋磁気刺激装置では、得られる結果がまるで違います。もちろん、20世紀の古い研究結果だけでも、人の脳と健康に良い影響を及ぼす環境磁気を作り出している、活断層に沿って宗教施設を建てていった古の知恵者達の、磁気を感じ取る感性が確かなものだったことが分かります。すでに20世紀に決着がついた古いテーマなのですが、勉強不足のまったくの素人が、今でもレイラインといったキーワードに過剰反応して、オカルトと妄信して研究者を蔑視的態度で似非科学と罵る誹謗中傷行為を繰り返すトラブルなどが散見されるようです。

 じつは、21世紀になってこの方面の研究は飛躍的に進んでいます。従来の脳波やMRIによる観察に加えて、脳の活動を調べる装置として、SQUID(スキッド 超伝導量子干渉計)と呼ばれる超電導電流を流すジョセフソン素子を利用した高感度の磁気センサーが登場して、脳磁図(MEG)を描いて脳の活動が詳細に分かるようになったことが大きいでしょう。さらに、ブレイン・マシン・インターフェイス(脳とコンピューターを繋ぐ装置)の研究に、かなりの投資が行われた成果も出てきています。頭の中で考えただけでパソコンに文字が入力できるシステムなどは、すでに何年も前にNHKで紹介されています。この分野は今熾烈な技術開発競争の真っ只中にあるので、産業機密扱いの研究も多いようです。新しい成果が表に出て来にくい状況になっているため、どのような環境磁気の変動パターンを与えるのが望ましいかある程度分かっていても、具体的なノウハウなどを公表できない状況にあるのです。このことを承知のうえで、従来から見られる稚拙な無理解に伴う蔑視現象を悪用して、ライバルを蹴落とす加害目的で、蔑視的態度を煽る誹謗中傷を働くグリーファーも存在するようなので、似非科学者呼ばわりの人格攻撃を行う人物には特に注意を払って、一定の距離を取る必要があるでしょう。

 活断層が作り出す局地的変動を含む、地磁気の変化が人体に及ぼす影響を専門に研究している方は、「地球はまるで生き物のように動いて、たえず人の脳にメッセージを送ってきている」と冗談のように話します。私が、「地球の言葉が分かりますよ」って言うと、すごく羨ましそうな顔で見られたことがあります。地震が起こる前兆として、予備的な地盤の崩壊に伴って井戸(地下水)の水位が変化したり、地下の岩石がゆっくり破砕されて電離したり、圧電効果に変化が生じることで地電流が急激に乱れる現象が起こったりします。それに伴って環境磁気も大きく変化することがあります。こういった変化を地震が起こる前に察知した動物達が、騒いだり避難する行動を取ることが知られています。野生動物の脳と人の脳の基本構造はあまり違いません。しかも、本当は人の脳のほうが高性能です。だから、本来は誰にでも地震の前兆は分かるはずなんですよね。現代人は視覚と聴覚に頼り切った生活をしているので、環境磁気の変化に意識が向かなくなって感度が下がっているだけです。でも、無意識のうちに脳や体は反応しているので、睡眠状態や体内時計のリズムが、磁気の影響を受けて変わることがあるのです。深層心理レベルで感知している情報を、意識上にうまく持ち上げることが出来なくなっています。私は阪神淡路大震災が起こる何日か前から違和感を感じていたし、早朝だったにもかかわらず、地震が発生する直前に家族が一斉に目を覚ましました。この話を聞いて、「野生動物並みの感度が得られるのは、環境磁気に反応する脳の神経回路網が開拓されているからですね。俺も原始生活をして鍛えてみようかな」なんて決意表明した人もいます。でも、原始生活をすれば磁気を感知する能力が高まるとは、私には思えません。根拠のない迷信の可能性が高いと思います。アスペルガー症候群の勘違いと、深層心理の教育の関係で、小学生のような絵しか描けない人達のケースを説明しましたが、現代人の磁気に対する感度の低下も、同じように「使われない脳の領域が未発達なまま捨て置かれてしまっている」状況に原因があります。だから、適切なトレーニング方法で、積極的に鍛えればいいんですね。私立の学園の地下に、環境磁気発生装置を設置して、私の脳が生み出す磁気変動のパターンを抽出・加工して流す試みを行ったところ、生徒達の環境磁気に対する感度が良くなることが分かりました。つまり無理に野性に帰って原始人の生活を体験しなくてもいいのです。生徒達は、磁気刺激によって気が整い、免疫活性を正常に戻すことで、風邪に対する抵抗力を高めることができます。生活環境への磁気活用技術の応用を研究している人々の間では、人の免疫細胞に直接磁場を印加することによって、特定の免疫担当細胞の機能の調節が可能なことが知られるようになってきています。細胞単位の磁気刺激効果を狙った、磁場処理装置の特許を出願する動きなども盛んで、今後多くの製品が市販されることになるでしょう。

 フィトンチッド発生装置と環境磁気発生装置を、他に先駆けて1990年代から2001年頃にかけて次々と設置していったのですが、によって、物心両面に対応する防疫結界を張る試みが功を奏したのか、親戚が経営する私立の学園では、学級閉鎖の発生が激減しました。昨年から騒がれている新型インフルエンザで学級閉鎖にしたケースはなかったと思います。これは、通常の季節性インフルエンザに対して、新型が特にハイリスクと言えそうな要素が見当たらなかったことも関係しているとは思います。


 というわけで、病は気からの精神面の防疫結界が、最新のブレイン・マシン・インターフェイスの技術を応用して形成できることが分かっています。環境磁気にまったく配慮していない、地磁気を遮断して磁気不足が発生する鉄筋・鉄骨を用いた建物の中に住み、磁気ノイズと言っていいような悪い磁気を出す家電製品に囲まれて、現代人の脳はストレスを受けて疲れてしまう傾向を示しているようです。そのうち家電製品に磁気シールドの対策が施されて、脳に心地よくて健康を増進してくれる、好ましい環境磁気を人工的に発生させる家の中で、快適な生活がおくれるようになると思います。私はいろんな制約があって、ここに具体的なノウハウを書くことができませんが、すでに他の親切な人達がネット上に情報を提供しているので、北枕健康法から順に試していくことは誰にでも出来そうです。ただし、体に機械を埋め込んでいる人は、強い磁石の取り扱いに注意したほうがいいと思います。それから、私は磁気ネックレスの類をあまりお勧めしません。強い磁気を帯びたものを体の一部分にだけ当て続けていると、どうしても偏りが生じます。素人考えで使うと、場合によっては悪い効果をもたらす可能性もあるのです。