熊撃退用唐辛子エキス入りボール(忌避剤)

今年も熊の被害が増える季節になってきました。熊対策として、以前から唐辛子エキスを詰めた撃退用ボールを普及させてはどうか、というアイディアがあります。しかし、幾つか普及を阻む問題点が指摘されています。そのあたりの事情を、私に分かる範囲で少し書いてみようと思います。

父はファーストガンダム世代の人で、十代の若い頃、宗教臭い社家の家風や神職を継ぐことを嫌って、「ガンダムを作るんだ」と言って家出して、海外に渡ってロボット工学を学んで帰ってきた人です。さすがに実物大のガンダムを作るのは諦めたらしく、小さく妥協して義手や義足の製作者になったようです。今は筑波大学が開発した電動アシストロボットスーツHALと同じような系統の、エアーチューブ駆動方式のパワードスーツを試作して、ガンダムの着ぐるみに内蔵して遊んでるほどのオタクです。「エアーフローで、着ぐるみを着て運動しても涼しいぞー」なんて言って、近所の小学生を集めては神社の境内の一角でロボット遊びをやってるので、弟達が「いい歳をして、恥ずかしいからやめてくれ」と懇願しましたが、マイペースの趣味人ですから、家族が何を言っても無駄でしょう。

この着ぐるみロボット戦闘ゲームで使う玩具の銃から発射される弾は、キャベツの植物色素のカラーペイント弾です。ところが、子供達は服に色が付いたぐらいでは戦闘を止めないで、撃ちまくろうとすることがあります。ゾンビ攻撃の状態になるとゲームとして成り立たないので、ヒットしたときのペナルティとして、薄めた唐辛子エキスが入っています。命中したらその場で涙目になっちゃうので、ゾンビ攻撃は無理ですね。というわけで、実用的な熊撃退用唐辛子エキス入りボールを作るノウハウを持った人が身近にいるのです。

じつは、うちの一族が管理する神社の一つ、八幡宮(軍神をまつる)には、古武術の体系が伝承されていて、親戚が道場を構えています。そのなかに、印地と呼ばれてきた投石技術の体系があります。これは、ロープに石を引っ掛けるための布が付いていて、遠方に投石する西洋ではスリングと呼ばれているアイテムの技術に相当するものです。戦国時代は戦場で盛んに使われていたようです。弓矢より飛距離があり、丈夫な鎧の上からでもそれなりのダメージが入るといったメリットがあったようです。織田信長が子供の頃好んで石合戦をした、なんて話も伝わっています。昔は5月5日になると、日本各地で大人まで参加して石合戦を楽しむ風習があったようですが、怪我人や死者が出るという理由で、明治維新後に禁止されたようです。今では雪合戦として残ってますよね。

この印地の技は、手拭いなどに石を引っ掛けても十分使えるので、江戸時代は喧嘩にも使われていたようです。じつは、うちの一族の女の子は、小さい頃から女性用の印地の技を護身術として習わされます。そのときに使うのは手拭いではなくて、昔の女性の絵に描かれている羽衣の衣装などに見られる、肩の上に棚引いている布、比礼(ひれ 比禮 領巾)と呼ばれるストールを用いるのです。振風比礼(かぜふるひれ)などのキーワードでネット検索すれば、耀姫や天日矛などの神を奉る、弓月の君に率いられた秦氏の一族、おそらく私達のご先祖様が、神宝として大陸から伝えたことが分かると思います。

領巾は本来魔除けの品とされ、装飾と護身を兼ねたアイテムと言われてきました。顔や首を蚊などから保護する効果があり、マラリア避けにはなるだろうから、魔除け(疫病避け)というのも、実用性から来た言い伝えなのかもしれません。護身用と言われているのは、石を引っ掛けて投げる印地の技に使うアイテムでもあるからです。もちろん、まともに当たれば相手は即死する、実用性の高い技の体系なので、危険性を考えて訓練内容は非公開とされています。中国には流星錘と呼ばれる、ロープに錘をつけた武器が伝承されていますが、同じような使い方もできるので、熟練者なら大勢に囲まれてもあっという間に殴り倒したり捕縛出来ます。この系統の技に対して、侍が持つ刀はほとんど無力です。剣道の上級者でも対抗することはほぼ不可能で、あっという間に体の自由を失って絡め取られる運命です。神社は流血の汚れを嫌うので、曲者を捕らえるのに最適の技術として発達したのでしょう。

一族の女の子達は、まずお手玉(小豆の袋)の遊びを覚えさせられ、次に領巾にお手玉を引っ掛けて振り回して遊ぶ方法を習得させられます。綾取りも教えられ、領巾とお手玉を組み合わせて、綾取りを応用した捕縛術をマスターすれば、10歳ぐらいで印地の技の免許皆伝となります。うちの一族が管理する神社に隣接した住居の敷地内に、巫女萌え用の盗撮画像を仕入れようと潜入してくる曲者が稀にいるのですが、これは止めておいたほうがいいと思います。神社の境内は、特別神聖な場所を除いて、基本的に誰でも入れるようになっています。でも、隣接する住居はプライベートなゾーンです。無断で塀を乗り越えて立ち入れば、不法侵入になります。盗撮しようとすれば曲者として捕らえられても仕方がないでしょう。人の気配に石を飛ばす人はいないと思いますが、印地の技を使って領巾から撃ち出された、唐辛子エキス入りのボールが飛んでくるでしょう。テニスボールよりもはるかに速いので、まず避けられません。

中学・高校と風紀委員をして、カツアゲ(強盗)グループなどと長期間やりあっていたので、私が印地の技で撃ち出した唐辛子エキス入りのボールを、実際に体験した苦い思い出を持つ人もこのブログを読んでいるかもしれません。武器を持たない人には投げた記憶がないので、子供時代かなりのワルで通した不器用な人しか、ぶつけられた記憶はないと思います。本物のカツアゲは一般に、現場を押えられても言い逃れできるように、合法的なストーリーを作ろうとします。武器など見せびらかしたりはしません。「センコウにチクリやがった」などと、自分達の理屈を振り回して風紀委員達を攻撃していたようですが、ナイフをちらつかせている強盗に出会ったら、防犯用のカラーボールを投げつけて犯人を捕まえるのがあたりまえです。それを、自分達を裏切る行為と決め付けて「チクッた」と咎め立てるのは異常発想でしょう。一般の生徒や風紀委員は強盗の仲間ではないことが、理解できていないようでした。先生や警察に言いつけられたくなかったら、最初から強盗にしか見えない、間違った方法でカツアゲの真似事などしなければいいんですよね。たぶん常識が通じない人達だから、逆恨みで変な理屈を振り回していたのでしょう。

メカマニアの父が創意工夫を凝らして作っている唐辛子エキス入りのカラーボールが命中するとどうなるかは、体験した人でないと分からないと思います。神社の社家の住居に不法侵入した巫女萌えマニアが、盗撮を試みて失敗すれば、服やカメラにべっとりキャベツ色の液体が付いて涙目になる、程度のマンガ的なイメージを抱いているなら、認識が甘すぎます。たしかに、その程度の被ダメージで済んだ人もいると思います。ところが実際には、幾つかの濃度のものを、状況に応じて使い分けているのです。一番威力があるものは、頭から浴びると5分以上呼吸困難に陥ります。鼻水が出て咳き込むため、まともに行動できなくなります。皮膚にかなりの痛みを感じるし、目に入れば30分ほど盲目になるので、犯行現場からの逃亡はまず不可能です。この威力を発揮するタイプは、ナイフなどの凶器を持っている相手に使用を限ることにしています。もとが食材(香辛料)とはいえ、過剰防衛と判断されると、暴行や傷害に問われる可能性もあるからです。

食べられるものが材料ですが、濃度が高すぎると致死的な作用も懸念されます。肺毒性、神経毒性などがあるという報告も出ています。悪用すれば暴行や傷害に問われる可能性があるし、店舗の中で使って営業の妨げになれば、威力業務妨害に問われる可能性も出てきます。もちろん、小学生の子供達が遊びで使っている玩具の銃から発射される唐辛子エキス入りのカラーペイント弾は、濃度を必要最低限まで下げてあります。だから、ちょっとの間涙目になる程度で済んでいます。といっても、稀に過敏な体質の人もいるので、問題が出る可能性がゼロではありません。遊ぶ前に唐辛子に対して体がどう反応するか、テストをすることになっています。

以上の予備知識を踏まえたうえで、熊撃退用ボールについて考えてみましょう。まず、市販されている熊撃退用の唐辛子エキスのスプレーですが、これはそれなりに実用になります。仕事上、熊や虎などの生態を調べにいくことがありますが、万が一に備えて携帯してる人がいます。殺してしまっては観察にならないので、襲われたときに銃で身を守る発想はナンセンスなのでしょう。でも、唐辛子スプレーはガスの圧力で9メートルぐらいしか飛ばないので、十分に近づかないと使えません。熊の襲撃から逃れる最後の手段にはなっても、たとえば、離れた位置で住宅地を徘徊する熊を発見したときに、追い払う手段として使うのは難しいですよね。人間よりも足が速いので、できれば近付きたくない相手です。そこで、遠くから投げられる撃退ボールの登場となる筈ですが、幾つか問題があるようです。

まず、どのように使っていくかです。
熊を捕獲したり殺す目的で唐辛子エキス入りのカラーボールを使うことに、私は反対です。呼吸困難や一時的な盲目状態になる濃度のものを使えば、熊の行動を封じて捕獲の専門家が到着するのを待つことが出来るでしょう。でも人間の都合で野生動物を追い詰めて絶滅させるのを、好ましいこととは思いません。捕らえる、殺すという発想ではなく、熊が棲む森と、人間の居住地域を明確に分けて共存出来るなら、そのほうが良いと思うのです。そうなると、熊が人間の匂いがする場所を嫌って、近づかないように躾ける必要があります。住宅街の近くで熊の姿が見えたら、そのつど積極的に唐辛子ボールを投げていけば、人間が住んでいる場所に近づくと餌が手に入るどころか、とんでもない痛い思いをするという、学習ができると思います。それには、大勢の人が唐辛子ボールを携帯して、見かけたら必ず投げつけて追い払っていく必要があります。この目的用のボールには、熊の行動力を完全に奪うような、高濃度の唐辛子エキスを使う必要はないでしょう。間違って人や家屋に当たってしまった場合も、被害の程度を低くできるように、薄めのものが使えるなら、それに越したことはないと思います。そういう観点からも、人里から追い払って近づかないように躾ける方法を選ぶことが望ましいようです。

つぎに、使用上の問題点です。
市販されている防犯用カラーボールを実際に使えば分かることですが、慌てるからなのか、訓練で、自分の足元に落として割ってしまう人がそれなりにいるんですよね。私達は小さい頃からお手玉で遊ばされて育つので、何の問題もないのですが、最近はテレビゲームの普及で、現実の世界でスポーツをしなくなり、ボールの扱いに不慣れな不器用な人が増えています。もしも間違って唐辛子入りを足元に落して、強烈な刺激を受けて咳き込んで苦しむ体験をしたら、二度と使いたくなくなりますよね。熊が出没する地域の小学生の登下校時に携帯させたら、熊に向かって使用するより、自爆頻度のほうが高かった、なんて話では困りますよね。この問題があるため、市販が見送られていると指摘する人もいます。

私が中学・高校と風紀委員をしているときに使っていたものは、少々のことでは壊れないようにケースに入れて制服のスカートの下に履くペチコート(アンダースカート)のポケットに収納していました。スカートの膨らみを形良く維持し、汗を急速に蒸発させるための大量のヒダヒダが付いているので、スカートの中を覗いても下着は見えない構造になっています。ボーラのカートリッジを仕込んだ振り杖や、領巾(印地用のストール)や、ベール付きの折り畳める帽子、扇子や袖炉などもスカートの下に携帯していました。いろいろ入れても不自由に感じたり、自爆することはありませんでした。ペティコートは、父が設計して母が縫製したものですから、振り杖を居合いのように取り出して使うのにも困りませんでした。一般の人がどのように熊撃退用ボールを携帯すればいいのか、ちょっと分かりませんが、女性は収納機能がついたペティコートを使うのが一番簡単でしょう。これとは別に、ハンドバッグに入れておいて、ひったくられたときにも唐辛子エキスが噴出するものを母が使っていました。海外でひったくりにあったときに作動して、犯人は警察官が到着するまで20分近く悲鳴を上げてのたうち回って地獄絵図だったそうです。あまりにも凄惨な状況にショックを受けたらしく、母は「もう怖くて使えない。バッグを奪われたほうがまだいい」と話してました。ペティコートやバッグに入れる場合に比べて、男性は持ち物が一つ増えたと感じて、不便さを強いられることになるでしょう。うっかりズボンの後ろポケットに入れて座ったりしたら、お尻の圧力で自爆する可能性があると思います。かといって、胸ポケットに入れていて、誰かに強く蹴られたり殴られて弾けたら、自分の顔に浴びてしまうかもしれませんね。というわけで、携帯はそれほど簡単ではなさそうなのです。

他の問題点としては、
一般の人が防犯用カラーボールを投げても、相手が動いていると、うまく命中させられないという問題があります。私は風紀委員をしていた6年間、一度も外したことはありませんが、一般の人はなぜか思っている以上に当たらないものなのです。熊は人間より素早く走るので、ますます当てにくいかもしれません。外れたら、熊の注意を引いてしまい、かえって襲われる可能性もあると思います。クマは視力が悪いので、ある程度離れた位置から不意打ちする形で物を投げると、攻撃したことを悟られず、反撃を受けずに済む可能性はあります。反撃を受けない距離から正確に当てるには、戦国時代の日本で普及していた、印地の技術を復活させる必要があると思います。手で投げるよりはるかに遠い距離まで正確に投擲できます。明治になるまでは、毎年5月5日の行事として行なっていたことですから、伝統文化として復活させても良いように思います。父が中心になってやっている着ぐるみロボット戦闘ゲームでは、ペイント弾を玩具の銃で発射していますが、その銃を持った父と領巾で対決したら、いつも私が勝ちます。だから、熊相手に玩具程度の射出機を用いるメリットはないと思います。父や兄弟もストールを使えば私達と互角の遠戦ができますが、木立を盾に接近戦に持ち込むと、ほとんど女性陣が勝ってしまいます。接近した綾捕り状態では、手数が同じなら体の柔軟性が高いほうが有利です。印地の綾捕りは体が柔らかい女性向きの技なのです。昔から、お手玉や綾取りが女の子の遊びとされてきたのは、おそらくこのような理由からでしょう。ある研究施設内で虎が暴れて麻酔銃が手元になかったとき、綾捕りしたこともあるので、熊より敏捷な動きをする猛獣の捕獲にも使えることは実証済みです。熊が相手でもボーラや領巾を使えば、大きな力を出さなくても楽に絡め捕ることができます。といっても、うちの一族は代々厳しい修行に生き残ってきた人々の末裔なので、大人になれば女性でも内家の者はみんな握力が80キロを超えるし、運動神経が良い人揃いですから、一般の女性に同じことが期待できるかどうかは、疑問符がつくと思います。

いずれにしろ、熊を捕まえるときに綱引きなどして勝てるわけがないので、ストールやボーラで絡め捕って行動力を奪ってから、十分なお仕置きをして、人間に対する恐怖心をしっかり植え付けて放獣するしかないと思います。お仕置きをしていじめるのを見て、可愛そうに思う人もいるでしょうが、恐怖心を植え付けておかないと、何度でも人里に現われてしまい、最終的には撃ち殺さなければならなくなります。人里と距離を置いて生活することを教えるのは、重要なことなのです。熊は鼻や耳がよく、人の気配に敏感な臆病な生き物です。通常は人の気配や臭いを怖がって、自分から距離を取りますが、なにかに熱中すると集中力を発揮して、周囲のことがまったく気にならなくなる習性があるので、人が間近に接近するまで気付かないこともあるのです。至近距離で人と出会ってしまうと、自分が殺される前に相手を撃退しないと生き残れないと思って、決死の覚悟で攻撃してきます。熊は攻撃するとき、立ち上がって前足を左右に振り回します。だから、立ち上がった人間を見ると、ファイティングポーズを取って威嚇しているように見えてしまい、本能的に恐怖心を覚えてしまうのです。そのため、二本足で立っている人間と、至近距離で遭遇した熊は、恐怖に駆られてどうしても人を襲ってしまうわけです。怖がらせないように四足になって、相手の存在を知っていながら、別に気にしていないような素振りで、ゆっくり近づいてから熊の流儀で挨拶すると、襲ってくる熊はまずいません。人の肉の味を知らない熊にとって、人間は食料ではないので、攻撃する理由はないのです。一般の人は立って歩くことで、不必要に熊を威嚇しすぎるから、襲われてしまうのです。熊に出会ってしまったら、慌てずに目を合わせたままゆっくり後ずさりして距離を取れば、攻撃されずにすむこともあります。月の輪熊は犬と同じように、目の前にある足などに噛み付こうとする習性もあるので、近づいてきたら失脚と呼ばれる古武術の足技を使って動きを封じたり、蹴っ飛ばしてあしらうこともあります。普段から犬とこういった遊びをして慣れている人でないと、噛まれてしまうかもしれませんね。うちの一族の男衆は、昔から修験道の修行として山野を渡り歩いてきたので、クマと戦える足技を伝承しているのです。ヒグマはサイズや攻撃パターンが違うので、微塵を用いて急所の鼻っ柱を叩いたり、懐に飛び込んで抱きついて攻撃を封じるなど、まったく対処方法が違います。アイヌの人々も今は普通の日本人として生活していますから、打ち根や日本刀でヒグマを倒す技の体系を今も伝承しているのは、親戚の道場ぐらいかもしれません。

気が弱い人は、怖い生き物と出会うと、本能的に腰を抜かして座り込んで、動けなくなる習性を持っています。座ることでファイティングポーズを解除することになり、戦意がないと相手に伝えられると同時に、熊は動くものを追いかけるので、座って動かなければ、他の動き回っている人にターゲットを変更します。結果的に気が弱い運動能力が低い人でも、生き残れるチャンスが生まれるようになっています。熊は目を合わせている間はなかなか襲ってこず、視線を逸らした瞬間攻撃に移ることがよくあるので、恐怖心で怖い対象から目が離せなくなるのも良いことです。熊の前で死んだフリは意味がありませんが、腰が抜けて座り込んで声が出ない状態になるのは、悪いことではありません。熊に驚いて至近距離で大声をあげるのは、相手を興奮させるだけなので、怖くて声が出なくなるのは正しいのです。このように、人間は本能的に対して正しい行動を取れる本能を持っています。

子供達を引率して登山していて、不用意に熊の親子に接近しすぎて襲われそうになった子がいたときに、腰を抜かしたおかげで、動いている私のほうに母熊がターゲットを変更して、間に合って助かったケースがあります。他の子達も怖くて凍り付いて一瞬動けなかったようですが、それが正解でした。今の小学生は、山で熊を見ると動物園にいる感覚で、大喜びで奇声を上げて自分から走り寄ってしまうことがあるんですよね。いくら私でも、そういった行動を取られると、見えない位置には飛び道具が届かないことがあります。熊撃退ボールを持たせてはいましたが、恐くて投げつけることが出来なかったようです。出発するときに、熊が出ると危ないという話をしたのに、ちゃんと聞いてなかったというよりも、浮かれて「熊さんに会いたい」なんて勝手な話をしていたようだし、困ったさんでした。いずれにしろ、弱い人は無理をせずに、自分の本能を信じて、上手に危険を回避すれば良いと思います。フィールドワークで野山を探索することがありますが、本能的な恐怖心が麻痺した人は、同行してて怖いと感じます。

最後にまとめると、

  1. 唐辛子エキスを用いた熊撃退ボールは、遠距離から投げて熊を追い払って、人の居住エリアに寄り付かないように躾ける運用方法が望ましい。
  2. 濃度を適度に低くして、自爆や誤爆や悪用時の被害を抑えるようにしておいたほうがいい。
  3. 悪用すれば、暴行、傷害、威力業務妨害、家屋汚損などの罪に問われる、という認識を広めて抑止力とする。
  4. 自爆しないように携帯する工夫が必要で、女性はポケット付きのペティコートや、引ったくり防止アイテムとして、バッグに忍ばせて使う方法もある。
  5. 安全・確実に運用できるように、伝承されてきた印地の技を再び普及させる訓練をする。

といった感じでしょうか。

現在市販されていない理由は、防犯グッズの専門家ではないので正確なことは分かりませんが、私が思いつく範囲で挙げてみると、

  1. 真っ先に悪用される可能性がある。
  2. 高濃度のものは、人体に有害という報告があり、被ダメージが大きすぎる。
  3. 熊に使うより自爆する頻度のほうが高くなる可能性がある。
  4. 動いている相手に対しては命中させることが難しく、物を投げて熊を怒らせると、逆に襲われる可能性がある。

といったところでしょうか。
これらの課題がうまく解決できるようなら、そのうち市販されるかもしれませんね。たとえば、一つのボールを投げるのではなく、狩猟アイテムのボーラの形にして投げれば命中範囲は広がります。熊は目が悪いので、十分距離を取って不意打ちで投げれば、反撃される状況にはならないでしょう。

オマケ。
唐辛子エキスのボールは父が精製して、幾つかの創意工夫が施されて機能が強化されたエキスが使われていますが、私が園芸用に使う唐辛子エキスは、自分で作っています。ハダニ、ヨトウムシ、アブラムシなどを追い払ってくれるので、ハーブと組み合わせて薔薇の花壇などに用いています。作り方は簡単で、細かくした唐辛子を2ヶ月ほど焼酎に漬けておくだけ。主成分のカプサイシンなどはアルコールに溶けやすいのです。おっと、このオマケの話程度で、簡単に熊が撃退できるアイテムが作れるとは思わないでくださいね。