発達障害とテレビ脳(プロトカルチャの顕現による自然調和した脳育環境の実現)

 先月、何度か発達障害について書いたので、人工環境と発達障害に関連する重要な情報を提示しておきます。多くの一般家庭の人が注意を払っていないと思いますが、テレビは赤ちゃんの脳の発達にとって非常に有害です。テレビのような一方的に与えられるだけの刺激からは、ほとんど何も学習することが出来ません。赤ちゃんはまず母親との同化を原点にさまざまな事柄を学習して自我を形成していきますが、周囲の状況を知ろうと注意を向けたり、周囲の大人とコミュニケーションをとろうとしたとき、テレビがついていると必要のない刺激を脳に受けて、思考を撹乱されて、正常な思考の流れを阻害されるので、脳の発達を著しく妨げる原因になるのです。ゲーム脳うんぬん、根拠があるのかないのか定かでない話が飛び交ったことがありますが、テレビ脳のほうは、顕著に脳の発育に現れるので、軽く見ていると、コミュニケーション能力などに問題を抱えた子を作ってしまうことも起こります。いろんな研究があるのですが、少なくとも2歳ぐらいまでは、子供がいる場所で長時間テレビを付けっぱなしにしないことが非常に重要です。とくに授乳中はテレビを消したほうがいいでしょう。

 赤ちゃんがテレビの内容を見て理解しているかどうかは、テレビの中の人物と同じ仕草をするかどうかで判断がつきます。1歳ぐらいまでは、まったく真似をしないので、じっとおとなしくテレビを見ているようでも、実際には放送内容をまったく拾えていないと考えるべきです。テレビを見ている子供は目がトロンとして口を半開きにして、死んだような表情になります。受動的になって、とくに前頭葉が働かなくなっています五感や観念能力がうまく発達していかず、脳の発育そのものが遅れるのです。

 日本小児科学会が2003年に1歳半の子供1900人の親を対象に行った調査によると、1日4時間以上テレビを見る長時間視聴の子供は、4時間未満に比べて、有意語の出現が遅れる率が1.3倍高くなっていることが分かりました。また、子供の近くでテレビが8時間以上ついている長時間視聴の家庭を対象に、4時間以上視聴している子供は、4時間未満の子供に比べて、有意語の出現が遅れる率が2倍も高くなっていることが分かりました。


 人工環境が人の脳の発達に及ぼす悪影響が、私のライフワークになっている「遺伝子がどのようにして脳を作り出しているか」を研究する邪魔になっています。研究対象の子供達が、みんな発育不良の脳を持っているのでは、正常に発育する人間の脳のデータが得られません。うちの一族では、昔から、「物心つくまでは子供にテレビを見せない」のが常識です。私の卵子の提供で生まれた遺伝子を受け継ぐ8人の子達も、この点は徹底してます。私達は研究報告など待つまでもなく、子供の反応からすぐに有害と気付いて、悪いことはやめさせますが、西洋の文化を妄信している人達は、適切な判断が働かないように見えます。我が子に言葉やコミュニケーションの障害が出ていることに、子育てをしながらリアルタイムで気付くのが正常な親なのですが、先月何度か書きましたが、現代人の親は、エンパシー能力が未発達で、恐ろしく察しが悪くなっているので、子供の脳の状態に気付けないのです。目がトロンとして口を半開きにして死んだような表情になっている我が子を見ても、無頓着で平気というのは、末期症状と考えたほうがいいでしょう。

 動物園の檻の中のような人工環境で飼育されている高等哺乳動物は、普通に寝起きして食事してすごすことには何の支障も認められなくても、育児拒否にはじまって、さまざまな問題行動を取ることが知られています。現代人も、不自然すぎる人工環境の中に棲んでいるため、さまざまなストレスと弊害を受けています。しかし、現代人は不自然な人工環境に慣れ親しんでいるため、必要とされる自然調和した生活環境がどのようなものか、答えを見失って正しい環境を作り出せない状況に陥って、抜け出せなくなっています。でも大丈夫です。見失われてしまった自然調和した理想の環境を、完全な形で再生する手段を私達は持っています。人の深層心理の次元には、人類にとって理想的な生存環境に関する、遺伝子情報系が保有するデータが存在します。それをここでは仮にプロトカルチャ(原初的文化形態)と呼ぶことにしましょう。遺伝子情報系は、保持しているプロトカルチャのデータを、人間の脳にロード(神経回路網を構築)します。人の深層心理は、生まれながらに脳内に持っている、プリセットされた生得真理のプロトカルチャのデータをもとにして、人類にとって理想的な生存環境を自律的に生成して、イメージを顕現させることが可能です。それは、人の意識上に、理想的な住まい、マホロバのイメージとなって現れるのですが、この理想の夢を実現する巣作り行動が、現代社会の中では正常に行えなくなっています。

 プロトカルチャのデータを、試みに私がここに文章の形でロードしてみましょう。

 まず最初に、目の前に風になびいて太陽の日差しをキラキラと反射する、風光る広い草原のイメージが広がります。このイメージを見た私の理性は、「人は樹から降りて草原を歩くようになった猿が進化したのだから、ここが生活環境で正しい」と考えます。つぎに、綺麗な小川の流れが見えてきます。これを見た私の理性は、「飲み水の確保は必須」と考えます。ついで、小川を辿って池になっているところに行くと、魚達が泳いでいるのが目に留まります。それを見た私の理性は、「食べ物の確保は重要」と考えます。さらに、木の実を豊かに実らせた林が出現し、草原にはさまざまな動物の姿が見て取れます。

 こういった、人類にとって普遍的な理想郷に関するイメージは、プロトカルチャとしてプリセットされた生得真理を下敷きにして生成されたものなので、誰でも正しく想い描くことができます。*1 私の理性がイメージを自己参照(フィードバック)して、後付けの説明的解釈を行っていますが、イメージが想起される時点では、深層心理は「人類が猿から進化して草原の動物になった」なんてまったく考えていません。「食料が必要」といったことも、考えているわけではありません。そういったことは考えるまでもなく、最初から必要なものが必然的に揃った、自然調和した形で想起されるように、私達の脳の神経回路のネットワーク上に、遺伝子情報系からプロトカルチャのデータがロードされているのです。これは、遺伝子情報系が持っている、人の体の形に関するデータが自然に調和した形でロードされて、私達の体が正しく自己組織化されて機能しているのと同じです。プロトカルチャを下敷きにした、人類にとって普遍的な理想郷に関するイメージも、出現したときから、自然調和した正しいものなのです。この点が、理性を働かせて自己参照する形で考える人工思考とはまるで異なる点です。意識上に出現したときから、人類にとって普遍的な正しさを持つ存在のことを、真理と言います。遺伝子情報系由来の脳内にプリセットされた真理は、宇宙の物理法則などを科学者達に想起させる元になっている外的真理と区別するために、生得真理と呼び分けています。私達が普段なにげなく意識している、心の中から自然に無意識のうちに湧き上がってくる思考(自然思考が、最初から自然調和した正しい構成で、次々と深層心理によって自律的に生成されてくるのは、生得真理が自己組織化されて顕現しているからです。この点が、考えた事柄の真偽が定まっておらず、絶えず検証していく必要のある、科学知識をもとにして理性を働かせて意識上で形式論理的に自己参照しながら生成していく人工思考とは異なります。生得真理から自然に無意識のうちに生まれてくる自然思考と、科学知識(生後取得した知識)から人工的に意識(自己参照)して生み出す人工思考は、陰陽一対の対極の関係にあります。

 プロトカルチャという生得真理が、自然調和した人類普遍の正しさを持つ理想郷のイメージとして浮かび上がってきたので、「この理想の夢を実現して、子供達に自然調和した理想の環境のなかで、すくすく育ってもらいたい」と願うのが親心ですよね。ところが、夢を形にする巣作り行動を実行しようとして、現代人は行き詰まってしまいます。「自然に還れと言われても、いまさら原始時代の生活環境を再現してどうするんだー!!」という、お約束のギャグですね。「そんなところに現代人が棲めるわけがないだろう。」ごもっともです。でも、子供達の脳がすくすくと成長するには、絶対に欲しい環境なんですよね。現代の一般的な日本人は、私の感覚からはちょっと信じられないのですが、仕方なくマッチ箱のようなマイホームの前に、猫の額ほどの、プロトカルチャ環境のミニチュアを作る習性があるんです。これを発見したときは心底驚きました。普通の日本人って怖いと思いました。風光る緑の草原。さらさらと流れる小川と池に鯉。こじんまりとした樹の茂み。ペットの犬猫。その全てをガーデニングと称して、猫の額ほどの土地に再現しているのです。でもね、あんなミニチュアとして、プロトカルチャの生活環境を再現してみたところで、子育ての場として実用になるはずもなく、ただの置物.完全にお金の無駄と思うんですよね。

 その点、平安末期に定着した国風文化を伝承してきたうちの一族の場合は、プロトカルチャを子供達の前に生活環境として再現して、脳が正常に発育する自然調和したライフスタイルを実現しています。上では省略しましたが、プロトカルチャの巣作りのイメージの中には、とうぜんマイホームも出現します。もちろん、そのマイホームは、プロトカルチャの他の自然環境と融和した、古い日本家屋の外観を持ちながらも、現代のハイテク機器を内包したものです。でも、一家団欒の場は、星が見える焚き火の周りだったりします(笑)。子供達はテレビの前では、目がトロンと生気を無くして、口をあけた状態になっていますが、焚き火を囲む団欒の場では、楽しげに、お手玉、綾取り、蹴鞠、ままごと遊びなどを、目を輝かせて生き生きとやっています。テレビを見るのと、父母や友達に囲まれた自然調和した団欒の場と、どちらが楽しいかと質問すると、「テレビの前よりここがいい」というのが、子供達全員の答えです。テレビゲームの動きは単調なので、すぐ飽きてしまって、大家族で焚き火を囲んで、一家団欒のおしゃべりや歌や踊りや御伽噺に興じて遊んでいるほうが楽しいのです。

 過去に文部省は、「余暇の充実」「心のゆとりを取り戻す」などの、一見すると聞こえの良いスローガンを掲げた教育改革を推進した時期がありましたが、残念ながら真の教育改革に至ることなく、学力の低下を招いただけでした。その最も大きな敗因は、理性を働かせて意識上で形式論理的に自己参照しながら生成していった、生得真理(プロトカルチャ)に基づかない、不自然な人工思考の産物だったからです。最初から自然調和している生得真理(プロトカルチャ)を顕現した脳育環境は、子供達の脳との親和性が最高の状態になるため、そのような宙に浮いた空回りは起こりません。人間は何万年もの間、日没後焚き火を囲んで一家団欒の一時を過ごす、キャンプファイヤーの生活をおくってきたので、自然と心が和んで打ち解けた独特のリラックスできる雰囲気が生まれるのです。このような、心が潤う濃密な時間がゆったりと流れていく、自然調和した脳育環境を持つことが出来なくなってしまい、不自然な人工環境を作り出して、子供達の脳の発達障害という、致命的な深刻な事態を招いている現象の本質を、もっとよく見つめて、問題を解決していく必要があります。


 遺伝子情報系が保持しているプロトカルチャのような生得真理は、イメージを想起する雛形であって、具体的な理想のイメージは、個々人の個性を反映してその時々に応じて変化するものなんですよね。もちろん、深層心理が想い描く夢は、人間にとって大切な必要なものだからこそ、心の奥底から湧き上がってくるのです。それを、マイホームのミニチュアのガーデニングにして、ただ置物のように眺めているだけでは、実を失っていることになります。脳が正常に育たず、コミュニケーションに障害を抱える子供が量産されていくライフスタイルの流行など、本来はあってはならないことです。私は、子供達の脳が正常に育てられるライフスタイルを整備するのは、国の義務教育の責任範囲に含まれると思います。個人の家の敷地内に、プロトカルチャの環境を再現するのが物理的に無理ならば、町内会で管理する公園施設を、子供達の脳育施設として再整備すればいいのではないでしょうか。

 遺伝子情報系がどのようにして人の脳の神経回路網を作り出しているのか、まだまだ分からないところが多い状況ですが、脳の発達障害を抱えた子供達が量産されている現状を改善するのは、待った無しの状況ですから、不完全な部分を含むものをここに提示しました。と言っても、ほぼ確実視されている研究の骨子しか書いてないので、他の研究者の方々も肯定できるものがほとんどだと思います。この種の研究は、人間の大脳と思考を、自律的に自己組織化する形で生成している元になっている、膨大な量の生命情報を取り扱うため、人工補助脳のサポートなくして出来ません。したがって、私達と本当に学術的な議論が出来る人は30人に満たない状況です。ここに書いたものは高校の教科書レベルの言葉を選んだ一般の人向けのものにすぎません。今後、文部科学省が推進していく必要がある、脳育環境施設整備事業を形のあるものにするには、ここに書かれた、一般向けのパンフレットのようなアウトラインの解説のみでは無理があります。しかし、はっきり言って、生命情報学の記号論に基づく数理的な表現を駆使して記述された、人工補助脳を用いなければ理解できない専門家向けの学術的な書き方をすると、一般の人々はもちろん、高学歴の文部科学省の人々ですら、誰も判読できず理解できないものになってしまいます。でも、そこで行き詰まって終わるものではありません。遺伝子情報系が保持しているプロトカルチャのような生得真理は、生まれながらにして私達の脳の中に神経回路網として存在し、深層心理として機能してイメージ(生得知識)を自己組織化して生成できます。自らの中に情報が存在していることに気付きさえすれば、理屈抜きで誰もが知っている(悟れる)事柄でもあるのです。それが生得真理の特徴なんですね。科学知識は学習しなければ把握できませんが、生得真理は生まれたときから知っているのです。だから、科学的に理解することは放棄して、非科学的に理解する選択肢を採るべきだと思います。非科学的な方法、すなわちイメージ(生得真理)の想起によって理解し、事業を推進するという、前代未聞のプロジェクトを、ここにこうして提示しておきます。


 [[テレビ脳]]に興味のある方は、以下のサイトをチェックしておくといいでしょう。

*1:実際には、育った文化や個人的な嗜好の影響を受けて個性化が起こるので、想起されるイメージは人によって異なってきますが、ここでは分かりやすく解説するために省略しています。